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Ⅰ-1-2 企業教育とお国柄

Ⅰ-1-2 企業教育とお国柄

牛田:「大学の頃に『実は企業教育に対する考え方は国ごとにも違う』という論文を読んだような記憶があるのですが…」

 

長谷川:「なかなかよく勉強していますね。この図(前回の記事を参照)では雇用管理のところに教育も入っていますよね。『企業で働くために必要な育成は企業が用意するべきだ』というニュアンスがあります。これはある意味で非常に日本的な考え方だと思います。欧米では人材開発は「国」「個人」「企業」の3つの主体があると考えられています。アメリカは個人の努力による自己研さんを重視していて、開発的人間主義アプローチと呼ばれています。だから企業の外で自分が勉強する機会も多いし、良くも悪くも自己啓発セミナーみたいなものや勉強会の機会が日本よりも多いみたいです」

 

牛田:「なるほどー。英会話教室みたいなポジションのものを個人が受講して力をつけることが重要、って考え方ですね」

 

長谷川:「そうですね。その究極がMBAなのかもしれない。フランスでは企業で役に立つ人になるための教育は政府や学校が用意するべきだ、と考えているそうです。こういった考え方を介入主義的アプローチと呼ぶそうです。イギリスは『企業が教育を用意するべきだ』という考え方(主意主義的アプローチ)だそうで、私個人はこの考え方が日本に近いように思います」

 

牛田:「そうなんですね。日本は終身雇用の考えが根強かったから雇った人を戦力化するのも企業マター、という風土が根強かったんでしょうか」

 

長谷川:「私も不勉強だからよくわからないけど、根本はそういうところなんだろうね。私の父親くらいの世代は『会社に入って何ができるかは個人ではなく会社側が決める』という考え方のほうが強かったそうです。であれば、結果その人が活躍するための教育の機会は会社側が用意するべきで、個人と会社は『あなたの生涯の面倒を見ますよ』と『私はこの会社に人生の大切な時間を捧げます』という関係、結論になりやすい。結果キャリア論の傾向としては自分主体よりも会社主体だった、と言えます」

 

牛田:「最近の就職活動でよくある『あなたはこれまでの経験を活かしてうちで何をしたいの』という質問とその考え方は当時と比べてみると、かなり違いますよね。個人と会社の関係性は時代にもよるのかもしれないですね」

 

長谷川:「あくまで個人的な意見だけど、この部分の基本的な考え方は意外とこれからも少しずつしか変わらないんじゃないか、という気がしています。なんだかんだ言って『履歴書や職務経歴で分かるその人の人財価値(やや乱暴ですが≒マーケットバリュー)よりもその人のその企業でのみ通用する専門性や人脈(やや乱暴ですが≒エンプロイアビリティ)の方が仕事をする上では大切』っていう価値観の方が現実的なように感じます。そして、この考え方は往々にして『その会社で、その部署のその仕事で発揮する力はそこで働くことを通してしか身につかない』という考え方につながります。前の会社ですごい実績を上げた人が同業他社では活躍できない、なんてこともよくありますからね。『うちの会社でこそ活躍できる人材を、そのためにはまっさらな新人に教育を』という考え方は案外根強いでしょう」

 

牛田:「今では『プランドハプスタンスセオリー=予定された偶然理論』なんてことを言ったりしますね」

 

長谷川:「そうそう。要は頑張っていればよい偶然をつかめるよ、って考え方です。もともと海外のほうが『正しい目標を持って、正しい努力をすれば成功は約束されている』という考え方が強い。あまりにもこういった考え方が世の中に浸透しすぎて誰も指摘しませんが、実はこの考え方自体が非常に思想色/宗教色のある考え方なんです。だからプランドハプスタンスセオリーみたいな『今いるところで頑張ることが大事だ』という、言い方を変えると『目標を持つよりも目先をがんばれ!』みたいな考え方が出てきて受け入れられるまでに時間がかかったんだろうと思います。しかもそれをセオリーと呼びたがるという」

 

牛田:「論語の『子、学びて時にこれを習う』~のくだりにある、『人知らずして慍(いきど)おらず、亦君子ならずや』みたいな考え方とはどうしても違うんですね。だって、人が私を評価してくれなくても憤らないのが君子というものだ、って意味ですもんね」

 

長谷川:「若いのによく論語なんて出てきますね…。この辺の考え方は世界史と資本主義の展開に関連する部分だからどうしても思想的な話になっちゃうんですよ」

 

牛田:「ちなみにドイツってどうなんでしょう」

 

長谷川:「ドイツの場合は社会全体がマイスター資格や徒弟制度を前提として成り立っていて、学術教育と職業教育を同時に進める考え方です。具体的には職業学校に通いながら企業で実務を積んでいく。デュアルシステムと呼ばれています。
がっちり修行することの大切さとその価値が社会的に認められている一方で、企業が学校にお金を払う形になっていて、これを修了しなければまず就業できないという厳しさがある。
一時期日本でも日本版デュアルシステムというものを国の旗振りでやっていましたね。
日本のデュアルシステムは当時の高校生の就職率やニートの問題への対策を、という方向でしたからどうしても技術職的な職業訓練の方向を向いたイメージが強かったですね。本来もう少し視野の広い施策であってもよかったのでは、と個人的には思っています。今ではもう少し議論を進めて、学校で学んだことと企業で活用する知識を連携させる努力を企業も個人もするべきだ、という方向の意見がだんだん多くなってきていますね」

 

牛田:「それがアメリカだと『会社は手を差し伸べるのではなくて個人の努力と責任が大事』ということになりやすいんですね。やっぱり風土ってありそうですね」

 

長谷川:「日本の場合も『個人の責任』論はないわけではないと思います。でも、海外のほうがはっきりしているよね。アメリカ系の外資系企業で働いている友達の話を聞くと、クビになりやすいけど、かわりに『この会社でダメなら転職すればいいや』『この会社で活躍できなかったのはただ単にマッチングの問題だ』っていう考えが日本よりも通用しやすいって言ってましたよ」

 

牛田:「なるほど~そうなんですか」

 

長谷川:「今回の議論は非常に奥が深い話なので、もう少し私も勉強しないといけないと思っています。日本的な企業の人材育成の考え方と外資(おもにアメリカ系)の人材育成の考え方、どっちがいいかは正直わかりません。ですが、自分の勤めている会社がどういう考え方なのか、どっちに近いか、位置づけを押さえておくことは人事でなくても、その会社で働く人にとって大事なことだと思いますよ」

 

ポイント!:当然だが企業内の人材育成の考え方にもお国柄があるし企業柄がある

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