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研修とは?講師とは?その位置づけを考える

人材開発担当として研修を企画する人、講師として研修を実施する人、研修で使うコンテンツを開発する人、事務局、そして受講生と、企業研修には色々な立場や役割の人が関わっています。
そうした中で「そもそも研修というものをどう捉えるのか」また「講師という立場をどう捉えるのか」という話はあまりにも根本的すぎるためか、普段は考えることがありません。
しかし、実はこの根本をどう理解するかによって研修の質が変わり、結果として研修の内容や効果に大きな影響が出る可能性があります。

研修とは何かを考える

「研修の位置づけ、定義」「講師の立場の説明」については諸説ありますし、抽象論ですので意味合いには幅があります。
しかし、ある程度本質を押さえた理解はしておく必要があると思います。
これは個人的な理解かもしれませんが、私自身は次のように研修を捉えています。

研修:企業の従業員及び関係者が現在、または将来求められる「知識」「スキル」「態度」等の能力開発を意図して行うもの、または、特定単位の組織がその組織の方向性の共有化および連携強化のための組織開発を意図して行うもの。

専門的な言葉では、人が人に何かを教える意図でとるコミュニケーションを「インストラクション」と呼びます。
文章に書いて伝えるのも動画を作って見せるのも、「何かを教える意図」があればそれは「インストラクション」です。
インストラクションを何らかの文脈(コンテクスト)に沿って複数組み合わせたものを「コース」と呼びます。
一般的には研修は「Off-JT」の形で「コース」を受けるもの、というイメージが強いと思われます。
また、研修は「知識」「スキル」「態度」等の能力開発ために行うのが一般的ですが、組織開発のように個々人の能力開発ではないもの、つまり、単純に何かを「教わる」ことだけが目的ではないものも「研修」には含まれます。
「組織開発」の項目でも触れたように、企業の研修においてはこの辺りが要因となって「対象が分かりにくい問題」「成果が分かりにくい問題」「意図が分かりにくい問題」が起こっているようです。

講師の役割を理解する

研修を実施する時に講師の存在は重要ですが、私は講師を下記のように受け止めています。

講師:企業の従業員及び関係者、あるいは特定単位の組織の「学び」を支援する人

講師は研修のコースを、主に対面形式やリモート形式で実施していく人です。
その際に注意しなければならないのは、「学びの主役は誰か」という問題です。
古くは授業の主役は教える人で、教わる人は脇役でした。
しかし、現在は「学びの主役は学ぶ人である」という考え方が主流となってきています。
授業設計工学やインストラクショナル・デザインと呼ばれる教育設計のための学問体系があるのですが、そこでは明確に「学びの主役は学ぶ人である」として下記のような形で授業設計の考え方を整理しています。

この「教育観」の違いは大きな分岐点といえます。
意図主義的教育観に基づくと、「私はキチンと言ったのに相手が変わらない」「でも言ったのだからそれでよし」という姿勢を許容してしまうことになります。
それが成功主義的教育観に立つと、「受け手が学ばなければ学習とは呼べない」ということになるのです。

「馬を水場に連れていくことはできるが水を無理やり飲ませることはできない」という諺がありますが、講師がどんなに力量を持っていても本人がその気になって学ばなければ学んだとは言えないのです。
この考え方は教える側に対してある種の「厳しさ」を突き付けていることにもなります。

「人材開発」のテーマの際に、「学習は本人の受け止め方の他にも多くの変数に影響を受ける」とお伝えしました。
つまり、成功主義的教育観に立つと「教える側の教え方、工夫等は学習者にとって学習を構成する要素の一部でしかない(少なくともほとんどを占めるような大部分ではない)」ということになります。
だからと言って、「こちらの教え方が要素の一部でしかないなら、教え方を改善したり工夫したりする必要なんかない」と考えてしまうのは早計です。
成果主義的教育観に立つと、「Bestな教え方」「正しい教え方」は存在しないけれども「いつもBetterを目指す」という姿勢を求められるのです。
また、学びのツールも色々なものが開発されていますし、学び手も時代や文化の変化の影響を受けて変わっていきます。
このことをきちんと踏まえて講師は研修を行う必要があります。
まとめますと、次のような要素を講師はきちんと理解しておく必要があります。

①受講生が学ばなければ「学び」ではなく、講師はそれを支援する立場である
②講師の介入、教え方は学びの要素の一部に過ぎない
③しかし、それでも学びの効果を高めるための改善も工夫の余地も常に存在する

つまり、講師は脇役で教え方に「正解」はないけれど常に改善、工夫の余地があって常に向上を求められる、という非常に「求道的」な姿勢が求められるのです。
このことをよく理解していない「プロと称している研修講師」がどれほど世の中に多いことか!
私が営業の立場で講師に仕事をお願いする際には、その人がどんな実績や経験を持っていてもこの根本的な部分で勘違いをされている講師にはお仕事をお願いしないように気を付けています。
講師は「自分は正しい」「自分の経験は正しい」「自分の教える内容、やり方は正しい」と決めつけて満足した瞬間に仕事面での成長が望めなくなる仕事だからです。
繰り返しますが、「学びの主役は受講生」「講師は学びを支援する人」「『言った』ではなく『学んだ』に価値を置くべき」ということは、すべての研修講師にとって基本的かつ重要な心構えだと私は思います。

未来マネジメントでは、研修講師の内製化や内部講師のプレゼンテーションスキル向上等の支援施策、さらにはコンテンツ開発についても一部ご協力することが可能です。
また、講師派遣の際の研修講師の選定については厳しい判断基準をクリアした講師のみ担当させていただいております。
研修について何かお考えの企業様はお気軽にお問い合わせください。

このコラムを書いた人:

株式会社未来マネジメント 取締役 営業部長 日吉良介

研修会社、人材開発業界で15年以上にわたり営業、講師、コンテンツ開発に従事している。
研修企画者として「日本にはまだ数少ないプロのインストラクショナル・デザイナー」と呼ばれることを夢見て日々研修の企画に取り組んでいる。
自身の講師としての得意テーマは「営業研修」で、これまでに3,000人以上の営業職が研修を受講している。
趣味は読書、プラモデル制作、フットサル。

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