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階層研修企画の重要ポイントとは?

前回の営業研修の企画のポイントに次いで、階層研修の企画ポイントについて考えてみたいと思います。
営業研修は職能研修なので「その仕事をやるのに必要な能力を身につける」のが大きな目的となりますが、階層研修というのは、例えば課長、主任等で「会社組織内でその階層の役割を果たす上で必要となる能力を身につける」ことが目的となります。
従って階層研修を企画する上で重要なのは、職務定義や職位要件に沿って「その『職位』でマネジメント上求められる役割」を研修計画に織り込むことが重要となります。
研修企画の基本プロセスは下記のようになります。

①職位要件の分析を行う
その階層、職位はどういうものなのかを明確にすることが最初に取り組むべきことになります。

②マネジメント上の期待役割の分析を行う
部や課といった組織単位で見た時に、それぞれの階層の人はどういうマネジメントをすることが期待されるのかを明確にします。

③期待役割を果たすための計画を考える
それぞれの階層に求められるマネジメントスキルをどう育てるのかについての計画を考えます。
この時には、現在の職位よりも一つ上の職位目線を獲得させ、その仕事の代行や補佐ができることを目指すことが重要です。
※今回の内容は「職位定義」や「グレード」といった名称が出てきますが、これらの位置づけや内容、定義は企業によって違っているものですのでその点についてはご了承ください。

①職位要件の分析を行う

職位や階層の名称については、例えば「課長」や「グレード3社員」等、企業によって採用している呼称が違います。
また、それぞれが明文化された定義も企業によって異なります。
しかし、「職位定義はとても固くて抽象的で分かりにくい」ということは多くの企業で言われていることですし、この点では一致しているようです。
企業には様々な役割や機能を持つ部署が存在しており、それらの共通項として明文化する必要があるために、どうしても抽象化せざるを得ないのが現実でしょう。
別の表現をするならば本質的であるということができます。

とはいえ、このことは研修の企画にとっては都合のいい状態であるとは言えません。
この本質的なことをそのまま研修企画に結びつけようとすると、実は膨大なテーマと要素が出てきます。
それらのすべてを教育訓練の計画や企画に織り込もうとするとやはりいくら時間があっても足りないという状況になってしまいます。
したがって分析と順位付けが必要になります。
分析した結果に基づいて優先度の高いテーマを取り上げて研修計画に落とし込んでいきます。

我々未来マネジメントでお手伝いをさせていただく場合には「グレード」等の表現を一旦「(一般的な)部長職相当」「課長職相当」「係長職相当」「主任相当」のような形で整理し、またその職位に就くのに最短で何年くらいなのか等の情報も加味した上で、職位定義の中身をシンプル化して共有する作業をしています。
実はこの作業は階層間の役割の違いとつながりを明確にするということでもあり、この作業を行うことで②の「マネジメント」の範囲も明確になるので、この作業は欠かせません。
また、職位定義の文章も抽象的ではありますが「要するに一人前として一人で仕事を完結できるようにする」「要するに課長職の右腕として代行ができる」というように「要するに」をつけて翻訳、時に意訳をすると分かりやすくなることが多いです。

②マネジメント上の期待役割の分析を行う

①の分析を入念にやると②は非常にスムーズになるのですが、ここで起こりがちなのが「『なんでも管理職の役割になっちゃう』問題」とでも呼ぶべきものです。
課の業績も部下育成も課のコンプライアンスマネジメントも管理職の役割、責任であることは、組織構造上事実ではあります。
しかし、現在の管理職はプレイヤーとの兼任が増えている上に「管理職になりたくない人材」が増えているという研究もあり、管理職は「そもそも候補がいない」「適性がある人は多くないので選べない」という状況になりがちで、その上でさらに負担を増やすのは得策ではありません。
そこで、管理職に至るまでの教育をどうステップとして計画するのか、またそこで管理職の役割をどう軽減していくのかを考えて手を打つことが重要となります。
例えば主任相当職の研修でOJTトレーナーの役割を理解してもらい、実務でその役割を担ってもらうことで管理職の役割の軽減につなげます。
管理職ばかりに負担が集中している企業は「管理職と他メンバーの負担格差」という視点で分析してみるのも一つのヒントになるかもしれません。

③期待役割を果たすための計画を考える

②を受けて管理職になるまでの計画の中でどうマネジメントのスキルを育てていくかを考えてきちんと計画し、その計画を実行していくことが組織としてのマネジメント体制を強化していくことに繋がります。
新入社員研修と管理職研修の間は新入社員のフォロー研修くらいしか実施していないという企業も少なくありません。
しかし、管理職になってから管理職に必要な能力を開発しようとしても遅いのが能力開発の現実です。

また、組織体制の在り方も計画に大きな影響を及ぼしています。社員には「今の自分の職位よりも一つ上の職位の目線と役割」を意識して仕事をしてもらう必要があるのですが、あまりにもフラットな組織になると「管理職とその他」状態になってしまって、管理職に責任と役割が集中しすぎる状況から抜け出せなくなる恐れがあります。
「管理職候補者」でもいいので何らかの職位段階を設けたほうが、人材開発の意図の明確化という観点では望ましいと言えるでしょう。実際に、過去において組織のフラット化に取り組んだ企業の中には、やはり組織としてのマネジメント体制が上手くいかなくなって、再び階層化に戻したところも少なくありません。

以上、階層研修企画上のポイントになるところを抽出してみました。
現在、終身雇用制の崩壊や「中途入社社員の増加」「再雇用者のポジションの出現」の結果、「経年ベースでの昇格要件」の足元がぐらついていて、結果として階層教育の体系の見直しをされている企業が増えています。
また、2024年は若手や新入社員の給与を上げなければ人が採用できないとして、多くの企業が若手と新入社員の給与を中心に見直しを行った年になりました。
結果、職位のポジショニングや定義、昇格要件、更には給与の配分についても多くの企業で見直しの動きや議論があるようです。
だからといって会社側が「人材開発計画」「階層教育の計画」を考える必要がなくなったわけではありません。
働く人たちの自助努力に任せて、人の昇格を「結果主義」にしてしまうのは、長い目で見れば間違いなく企業の衰退を招く悪手であるといわざるを得ません。

未来マネジメントでは多くの企業様で階層研修や教育体系の整備をお手伝いしてきた実績がございます。
もしも教育体系、研修体系や階層研修の実施でお悩みの企業様がございましたら未来マネジメントまでご相談ください。

このコラムを書いた人:

株式会社未来マネジメント 取締役 営業部長 日吉良介
研修会社、人材開発業界で15年以上にわたり営業、講師、コンテンツ開発に従事している。
研修企画者として「日本にはまだ数少ないプロのインストラクショナル・デザイナー」と呼ばれることを夢見て日々研修の企画に取り組んでいる。
自身の講師としての得意テーマは「営業研修」で、これまでに3,000人以上の営業職が研修を受講している。
趣味は読書、プラモデル制作、フットサル。

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