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Ⅶ クレーム解決の成功のポイント・失敗のポイント

◆事例3 忙しくて電話対応で済ませようとして

お風呂・洗面所の改装工事で不具合が発生し、是正工事をしなければならなかったのですが、それを放置して、請求書を発送してしまったためにお客様の福島様からお怒りの電話が入りました。工事完了前に担当者が退職してしまい、是正工事の引継が成されていなかったのです。新しい担当の高橋さんが福島様へのお詫びと今後の対応について調整を図っていましたが、終盤になって福島様からかなり高額な値引き要求と、責任者と話がしたいという要求が出されました。

高橋さんからの報告と依頼を受けた石田課長はお客様に電話を入れました。「この度は大変ご迷惑をおかけしました。弊社としましてはまずは工事を完了させていただきたい。お申し出の値引きに関しては工事完了後に改めてご相談させていただきたい。」と依頼しましたが、「話にならない」と一蹴される始末でした。石田課長は忙しくて訪問せず、福島様と何度か電話でやり取りをしましたが、双方の主張は平行線で、とうとう福島様から「あなたじゃ 話にならない。もっと上の責任者を出せ」と強く要求されたのでした。

困った石田課長はこれまでの経緯を話し、上司の鈴木部長に相談しました。こちらの対応のまずさを感じ取った鈴木部長は、福島様への訪問の約束を取り付け、担当の高橋さんと一緒に訪問しました。そこで福島様からしつこく言われたのは「工事未完了で請求を出すなんて会社としておかしいのではないか」「課長さんは一方的に自分の考えを押しつけてくるだけで不快極まりない」「お詫びの訪問さえない」ということでした。

鈴木部長はここまで話をこじらせてしまった原因はこちらにあると考え、お客様が要求する値引きを受け入れ、未完了部の工事を完了するということでご了解をいただくことにしたのでした。

 

失敗の要因、成功のポイント

福島様の感情が高ぶっていることは十分予測できたにもかかわらず、忙しさを理由にして電話で済ませようとした石田課長の対応には大きな問題があります。怒っている福島様に対して、お互いに表情を見ることができない声だけで対応しようとした、さらに、一見正論に見えるこちらの都合を押しつけようとしたこと。加えて電話だけの対応を繰り返した石田課長の対応は、問題を複雑化させるだけでした。

こうなると理性的な正しい対応や解決策を提示しても福島様は聞く耳を持ちません。それどころか、「電話一本でコトを済ませようとしているのか。あなたにとってはその程度のことなのか、私はその程度の客なのか」と怒りと不信感を膨らませてしまうのです。
石田課長がすぐに駆けつけて、責任者として丁寧にお詫びした上で、福島様の要求をつかんだ上での提案であれば、もっと早く解決できた可能性があります。

石田課長の対応のまずさを把握した鈴木部長は、違った対応をとりました。すぐに駆けつけて直接会い、丁寧にお詫びしたのです。さらに問題をこじらせてしまった責任はこちらにあると判断して、福島様の要求を呑むという対応を決断したのです。その結果、福島様からのクレームを解決することができました。

 

まとめ:いざという時は責任者が前面に出てクレーム解決を

クレームは担当者レベルで解決できるに越したことはありません。しかしながらお客様との関係がこじれそうになったり、こじれたりした場合には、すぐにでも責任者が出ていかなければなりません。
担当者に厳しい経験をさせるため、クレーム対応力をつけさせるためなどの理由で本人任せにしてしまうことが時に見受けられますが、この判断は否定されるべきでしょう。これでは成功体験も積めず自信づけにもならないからです。一緒にクレーム解決の経験を積ませることで少しずつ力をつけさせていく必要があります。責任者のスピーディーな行動がクレームという問題解決を上手に進めることができるのです。

もう一つ押さえておかなければならいことは、お客様からのクレームは個人に寄せられたものではなく企業に寄せられたものであるということです。ですから組織でクレームを解決しなければなりません。そのためにも責任者の役割には大きなものがあるという認識はしっかりと持って、必要な対応をしていかなければなりません。

 

◆補足ミニコラム:「感情は声に表れる」ので注意が必要

感情は表情よりも声に表れるという実験結果があります。それによると「顔の表情はごまかせても声はごまかせない」ということになります。これを電話でのクレーム対応場面に照らすと、例えば「早く解決したい」「正当な提案だ」、さらには「面倒くさい客だ」といった感情を持っていると、それが声に表れてお客様に読み取られてしまい、さらにお客様の怒りを増大させてしまいます。クレーム対応時の声の怖さを知っておくとよいでしょう。

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