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5.ノンパワハラ・マネジメントの勧め⑤

「エージェント状態」を主張しても責任は逃れられない

服従実験で有名な心理学者のスタンレー・ミルグラムは、権威者に命令されてモラル違反のことをしている時の状態を「エージェント状態」と呼んでいます。

善良な人間が、権威に逆らえず罪を犯してしまう。一流企業や官公庁における組織ぐるみの隠蔽工作などはその代表例でしょう。「悪い」とわかっていながら、長いものに巻かれてしまうのが人間です。そこに「服従の心理」があります。

ミルグラムによれば、エージェント状態にある時は責任を認めようとしないのです。「上の指示に従っただけ」という心理にあるため、自分に責任があるとは思っていないのです。
このことはパワハラ問題を複雑にしている要因のひとつになっています。

実はパワハラの裁判中にもこの現象はよく起きています。加害者の「上からもっと厳しくやれといわれて仕方なくそういう行動をとった」とか「上の指示に従わないと、私が責められるので仕方なく」といった言動です。まさにエージェント状態なのです。
仮にこうしたことが背景にあったとしても、「加害者としての責任」から逃れることはできません。

 

「ミルグラム実験」とは

ミルグラム実験とは、閉鎖的な状況における権威者の指示に従う人間の心理状況を実験したものです。アイヒマン実験ともいいます。
アイヒマンとは、大勢のユダヤ人を強制収容所に送る指揮をとったナチス親衛隊中佐のことです。終戦後、逃亡していたアイヒマンが捕らえられ、イスラエルで裁判が行われました。その際、どれほどの残虐な悪人なのかが注目されたのですが、上からの命令に従っていただけの普通のおじさんであったことが明らかになりました(いわゆる「凡庸な悪」)。
極悪人ではない普通の人間が大虐殺を行なうことができるのか?
「アイヒマン実験」とは、ユダヤ人であったミルグラムが「なぜホロコーストが起こったのか」「なぜ人は服従するのか」を解き明かすために行なった実験です。

その実験方法とは、大学の博士役の管理のもと、2人の被験者が先生役と生徒役(実はサクラ)に分かれ、先生役が出す問題に正解できないと、別室にいる生徒役に電流が流され、間違うごとにその電圧が上げられていくというものでした。

生徒役が電流を流されるたび、うめき声をあげ、絶叫する(もちろん偽)。先生役は躊躇し、拒否するものの、博士役が「続行してください」「続行していただくことが必要です」と通告されると、なんと大半の人間が最後まで電流を流し続けたといいます。
最初に生徒役が「心臓に持病がある」と言っておいたり、電流を流すうちに叫び声さえあげず無反応になってしまったりしても流し続けたのです。

被験者たちは、電流を流すことが“やばいんじゃないか”とは感じてはいても、大学の博士という“権威”に服従することで責任を放棄しているかのようでした。
こういった状態を「エージェント(代理人)状態」と呼びました。
ある「権威」を前にすると、その権威に対しての責任は感じるのに、権威が命じた中身に対しては責任を感じなくなり、あくまで権威の代理人として行動している状態になるということなのです。

この実験で示されたことと同じように、かのアイヒマンも「私は命令に従っただけだ」と主張し続けたのです。

 

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