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カタリストとは化学反応を引き起こす触媒のこと。
証券会社の世界では相場に影響を与えるきっかけになるイベント等のことを指す。
例えばニュースや何らかの指針の発表、政府方針の発表などが典型的なものとして挙げられる。
人材開発の世界では、周囲に良い影響を与えたり刺激になったり意識の向上を促進する人材のことをカタリストと呼び、一部の研修会社では「カタリスト人材」「カタリストリーダー」という言葉も使われている。
誰がカタリストなのかを診断するアセスメントもあるようだ。
近年の話題としては、ペンシルベニア大学ウォートン校マーケティング教授ジョーナ・バーガーがそのままのタイトルの本「カタリスト」という本を書いていて、日本では2021年にかんき出版から翻訳本が出ている。
人を説得する、行動を変えてもらうためには自らが相手にとっての触媒となるべきで、こちらの考えを押し付けるべきではない、という考えのもといくつかの心理学的知見を解説した本になっている。
現在のタレントマネジメントや組織開発の文脈では、はっきりと明言されていないが下記のような前提で説明されることが多い。
①組織風土が良くなるか悪くなるかはカタリストが多いか、問題児が多いかがカギを握っている
②周囲に良い影響を与えるきっかけになるカタリストは育てることができる
③まずは組織内にカタリストを増やすことで組織風土を良い方向に持っていくことができる
上記のような考え方には、社会学者のエヴェリット・ロジャースによる著書「イノベーション普及学」等が大きな影響を与えているように思われる。
また、「組織そのもの」よりも「組織に影響を与える個人」に注目するやり方としてインフルエンサー理論とも通ずるところがある。
このように、あらゆる分野で「カタリスト」は理科の実験状況下の触媒のように管理、活用可能で再現可能性が高いものとして扱われている。
しかし、近年マーケティング理論の世界ではインフルエンサー理論の有用性に疑問符がつくようになってきていて、以前ほど「インフルエンサー」「オピニオンリーダー」といった言葉を聞くことは少なくなってきている。
また、組織を「個人の集まり」と見るか「それ以上のもの」とみるかは、社会学や心理学の世界で過去から議論されて未だに決着がついていない。
このことを人材開発の世界に転用すると「カタリストの重要性」「カタリストは育てることができる」という考え方も絶対の原理原則か、あらゆる組織で言えることかどうかは言い切れないように思われる。
昔からこうした組織変容のための考え方は個人のリーダーシップを重要視したりフォロワーシップを重要視したりと軸が定まっていない。
カタリストもまた活用範囲を拡げながら応用学問的な発展を続けるものと思われる。