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【マイクロラーニング】

マイクロラーニングは、従来のeラーニングに対して短い時間で終わるコンテンツを消化する方が学習効率の面で有用である、という考え方から開発された短い学習サービスのことを言う。
言葉としては2014年頃からあったようだが、HPI(Human Performance Improvement)の項目でも触れた世界最大の人材開発に関する団体「ATD(Association for Talent Development)」のカンファレンスで2017年に取り上げられたことがきっかけで広く知られるようになり、多くの人材開発に関連する会社がこぞってマイクロラーニングの考え方でサービスを開発するようになった。

そもそもなぜマイクロラーニングが有効、と言われるようになったかというと、人間の集中力の研究に大きな進歩があったことが一つの契機である。
中学生を対象にした記憶に関する実験の結果、60分の学習を行うのと15分×3回の学習を行うのでは後者の方が長期記憶として残っていたという実験結果が出ている。
こうした種類の実験が多く行われた結果、「人間の集中力は15分が限界→研修で講義は15分以上続けてはいけない」「学習コンテンツは短く作れるのであれば短いほど良い」といった考え方が広く知られるようになった。
結果、現在のマイクロラーニング系のコンテンツは5分~10分位の長さのものが多いようである。

以前「ハーバート・アレクサンダー・サイモン(人名)」でも取り上げたハーバート・サイモンは情報過多社会の到来を予言していて、「情報」が増えれば増えるほど、一つひとつの情報に向けられる「注意」は減るという現象を説明している。
その延長線上で「情報の豊かさは注意の貧困をもたらす」という名言を残し、「関心」「集中力」が通貨のように扱われる社会が来るのではないか、という内容の予言をしている。
サイモンの言う通りで、現在「人間の集中力」は非常に希少な資源になってきている、とする心理学者や脳神経学者は少なくない。
1997年に、アメリカの社会学者マイケル・ゴールドハーバー(Michael Goldhaber)が「関心経済」という概念を唱える等、インターネット、スマートフォンなどの進歩と普及は人類を情報の洪水に巻き込んでいるのが現代、という状況と言える。
ある調査ではオフィス・ワーカーは1日に120通のメールを受け取り、40通を発信しているという。
そこにさらにSNS、スマホゲーム等もあるのだから人間の脳は疲れているのが平常運転、集中力なんてどんどんなくなっていて当たり前、と言える。
この観点からすると、マイクロラーニングは非常に理に適っている一方で「そもそも情報過多な現代だからそうした実験結果が出たのでは」という前提を疑う考えも一定の説得力があるように感じられる。

マイクロラーニングの登場はタイムパフォーマンスファスト教養といった概念の登場と完全に同期しているように見える。
また、そもそも15分で人間が理解できるものには限界があり、複雑な内容や大きなテーマを理解するのにマイクロラーニングのやり方は向いていない、とする意見も少なくない。
今、スマートフォンの普及やAIの発展などで「人間が学ぶこと」の根本が問われているように思われる。
少なくとも向き不向きをきちんと精査して使う必要がある概念といえるのではないだろうか。

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